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制作部署のカラーが出てしまうWeb

「全社一丸となって不況を乗り切ろう」と各部署が連携していても、各々の部署の目的や利益は必ずしも同じではありません。ここでは筆者が経験した、部署間によって全く異なる要望に基づいてWebを制作したらどうなったかという話をご紹介します。

どの会社の部署にも求められている役割というのは決まっており、それゆえに部署の持つカラーがWeb等を作るとそのまま出てしまうことがあります。

これは筆者の経験上の話ですが、営業、総務、広報のそれぞれの部署で求められるサイトを制作したことがあります。

各部署の打ち出したサイトの制作目的やコンセプトは、多少語弊はありますが、平たくまとめると次の通りです。

営業がWebに求めるもの

総務がWebに求めるもの

広報がWebに求めるもの

結論から言えば、それぞれ別のサイトを立ち上げました。

具体的には以下のようなサイトを3つ制作しました。

営業の要望を受けて共に作ったサイト
自社の製品情報・技術情報がスペックだけでなく、活用方法も含めて満載されたものになった。はじめて当社製品を使う顧客や、この分野に馴染みのない顧客にも一から分かるように丁寧な情報提供を心がけた。顧客層が欲しがる情報や、役に立つと思われる情報は何でも掲載した。問い合わせはメールで来た場合、営業時間中は1時間以内に最初の返事を出し、電話で問い合わせのお礼も言うようにした。その際、メールでは書かれていなかった困りごとや問い合わせの経緯などの情報を収集した。コンテンツは毎日何かしら更新し、総ページ数は1200ページを超え、日々増え続けている。
総務の要望に基づき共に作ったサイト
会社案内として求められる自社の基本情報、地図、沿革などを簡潔に過不足なく制作した。写真や文章も一つ一つ会議で納得のいくまで話し合って決めた。当社の事業に馴染みのない方でも、一読して事業内容がつかめるよう実例と写真を駆使して読む文章も短く工夫した。営業に配慮し、カタログがダウンロードできるようなコーナーも作ったが、問い合わせ等は基本的に販売店や代理店にしてもらうよう誘導した。総ページ数は6ページとなった。サイト完成後は、「当社からのお知らせ」の部分を定期的に更新した。基本的に社名以外のSEOはして欲しくないということで、非常に手間がかかったが、社名以外のキーワードで検索してもサーチエンジンで見つからないよう対策を行った。
広報の要望に基づき作ったサイト
営業はあまり乗り気ではなかったが、製品のイメージをあげるため、製品の通称名を「ブランド名」として掲げ、ロゴやキャッチコピーとともに華々しくデビューさせた。手作りではあるが、オリジナルキャラクターも作った。工業分野でもあり、今まで同業が使わなかったような斬新なデザインや写真を多用した。UI(ユーザーインターフェース)にはこだわり、サイトにもフラッシュを駆使して、「何かやってくれそうだ」との印象を与えるよう努めた。
一般向けの啓蒙コンテンツとしては、子供向けのキャラクターも作ってわかりやすく解説した。デザインやイメージにこだわったが、誰に対してどのような「知名度の向上」をはかるのかは明確にしなかった。
ブログを開設し、Twitterにアカウント、Facebookにも公式ファンページを作って情報発信した。ブログではネタが不足したため、ほとんどの話題は昼飯の話と、時事問題の感想になった。Twitterはフォロワーを増やすことが出来ず、サイト更新の通知として主に活用。総ページ数はブログなどの連動企画も含めて約200ページとなった。

それぞれどんな成果だったか

何を持って効果があったとするのかにもよりますが、1年ほど運用したところ、ページビューや問い合わせの数が最も多かったのは営業の企画したサイトで、年間1500件ほどの問い合わせとなりました。

総務のサイトのほうでは、要望どおり、直接問い合わせは年間で3件。当社の知名度自体が業界関係者以外では低いため、閲覧数もきわめて少なくまとまりました。

広報サイトのほうでは、問い合わせは年間50件程度。製品に関する有益な情報が少ないため、地に足の着いていないコンテンツ、あるいは分不相応なコンテンツとでもいうのでしょうか。妙に浮いたサイトに仕上がり、TwitterやFacebookでも特にフォロワーや「いいね!」ボタンを押してくれた人にメリットのあるような情報提供は出来ずに終わりました。

デザインや原稿執筆、コーディングもすべて内製したため、費用は集客に用いたリスティング広告のほかは、ホスティング、ドメイン費用、写真の版権、社内の人件費が総経費の内訳です。広報はともかく、それぞれが目的のサイトを作り、達成すべき部分には達成した観ではありますが、中小企業のWebサイトやコンテンツはどうあるべきかについて深く考えさせられる契機となりました。

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